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演出&制作編 蔵出シムーン・シヴュラ 第1回アニメシリーズの最も熾烈な現場をかいくぐってきた戦友?!  「シムーン」各話演出を手がけた演出部と、スタジオディーン制作部スタッフが、互いにけん制し合い、協力しあった日々を振り返ります。

うえださんと孫さんに演出として「シムーン」の話が来たのはいつごろですか?

演出・うえだしげる(以下、うえだ):オレより孫の方が先だもんな?

演出・孫承希(以下、孫):そうですね。

制作プロデューサー・松田桂一(以下、松田):孫さんに話がいったのは、確かうえださんからなんだよね。前に別の作品でうえださんと関わった時、「孫という女の子がいるんだけど、そろそろ個々の作品をやらせてみたいな」という話があって、スケジュールが合う作品を探して、まず何本かやってもらったんです。そしたら、面白かったから――。

孫さんの演出が、ですか?

松田:いや、孫のキャラクターが(笑)。

(一同・笑)

うえだ:作品は、まだまだですよ(笑)。

:すみません!

松田:まだまだ新人で慣れてないというところもあるけれど、作品をこなしていこうという姿勢に好感を持てたし、うえださんが面倒を見てくれているというところもあるので、それであるなら、都合がつけばもうちょっとウチでやらんかいというお声掛けをしたんです。

うえだ:「シムーン」に関しては、まず通訳をしてもらったのがあったよね?

松田:メカデザインの韓国のSongさんが、日本語がまだよくわからなくて、普段はSongさんの会社の社長さんが通訳をしてくれていたんですけど……いない時に打ち合わせをしたくなったんですよ!  そこにたまたま、別の作品のチェックをしていた孫さんが……。

孫さんが「シムーン」をやる前ですか?

松田:うん。ゼンゼンやる前(笑)。こんなところに韓国語がわかる人間がいたじゃないか!

(一同・笑)

その話はいつごろですか?

松田:正月明けぐらいだったっけ?

:寒かったような気が……。

うえだ:新社屋だったから、1月だったんじゃない?

その通訳の仕事をやった時は、そのまま「シムーン」の演出の仕事をするとは……?

:思いませんでした(苦笑)。いや~、通訳がボロボロだったんでー。監督に韓国語で話しかけたりして、1人パニくってました(笑)。通訳はたまにやっていたんですけど、いきなり来て「ちょっとやってもらえないか」ってその場に呼ばれて、もう(笑)。

うえださんと松田さんの仲は、古いんですか?

松田:もう業界入った時からだから……

うえだ:20年?

松田:うん。20年目、みたいな。オレが新人だった時に演出助手だったから。

うえだ:あくまで1年先輩だから。ほとんど変わんないよ。

松田:元・制作進行のうえださんは、僕が入った時に演出助手になって、「オレ、今日から演出助手だからよろしく!」って言って、途中の制作進行の仕事をウチらに振って、演出助手になった男だという……(笑)。

うえだ:(笑)

松田:まぁ、前にいた会社の先輩と後輩です。その会社はスタッフに非常に優秀な人達が集まっていて、それで上の人には絶対服従ってルールがあったんです。

うえだ:ちょっと体育会系っぽい部分はあった。

松田:うえださんとの話じゃないですけど、今でもその上下関係は生きていて、例え名前がいくら売れていても、「○○、ギョウザ買ってこい!」「はい!」って部分があるんです。

なるほど。それが「シムーン」で相まみえたわけですね。

松田:そうなりますね。

うえだ:10年くらいディーンとの仕事はやってなかったんだけど、「ウィード」で久しぶりにご一緒しました。たまたまですね。ちょうど「エレメンタルジェレイド」が終わるというときに、松田とたまたま飲む機会があって、その時「オレ、今暇なんだけど、何か仕事ある?」「あるあるある!」って。その時、孫とセットなの。「こういう女の子がいるけど、どう?」って。

久しぶりに会った松田さんの仕事振りはどうでしたか?

うえだ:それはもう、大人になって(笑)。すごくまともな事、言うんだもん!

(一同・笑)

:うそだぁ~!

うえだ:まともだよ~! 昔の松田を知っていたらこんなもんじゃすまないぞぉ~?!

(一同・大笑)

松田:マジにヤバい事ばっかりだった。この業界でいうところの武闘派というものみたいで……(苦笑)。あまり深く訊かないでください。

うえだ:しかもディープな武闘派、みたいな! ……まぁ、そういう意味では丸くなったなと。ちょっと思ったのが、作品に対してすごく真摯になったなと。

松田:ウンウン。

うえだ:作品の事を考えるからこその行動ってものを、ちゃんとできるようになったと思うよ。とりあえずあげちゃおうよ! みたいなノリは、ゼンゼンなくなってきたかな。その辺は、それまでに作品をやってきたからだと思うし、松田の成長具合という物をすごく感じます。まぁ、それは逆に、そういう事がわかるぐらいにオレも成長したんだよと言いたいわけです(笑)。

(一同・笑)

松田:もう、書けないくらい悪者でしたからね(苦笑)。

うえだ:最初の頃の態度、すごかったもんなー。「絵コンテあがってマッハ、カッティング」って言うのを、延々続けていたからね。「何だよ、松田! これ、内容結構きついぞ!」って言っても「だって、カッティングあるんだもん」と(笑)。

(一同・笑)

演出家の選択はどういう観点から選ばれるんですか?

松田:それは、二分しますよね。「これはあの人向きだ。あの人にやってもらったら面白そうだ」というのはもちろんあるし、あとは、経験のない新人だけど、この人がやったら絶対面白いという人をチョイスしたりしています。演出に限らず、どんどん若い人を育てていかないと駄目だっていうのが、自分の心情としてあるものですから。孫さんはね、面白いんですよ、この人。本気で怒るの!  毎日が、テンパイ! 即リーチ! みたいな。

うえだ:一応フォローを入れとくと、制作出身だから制作に厳しくなるんですよ。

松田:それで素晴らしいんですよ。「シムーン」はスケジュールが厳しいでしょ。孫さん、制作出身だから、このペースでこの段取りだと絶対間に合わないってわかるんですよ。「松田さん、私はどうすればいいんですか!  これ無理ですよ!!」って。

:(笑)

松田:オレの答えは「何とかしてくれ。僕にできるのは応援する事だけ」(笑)。

:あんまり応援してくれてないじゃないですか!

松田:応援していたじゃん!

:だって、後ろで「がんばれー!」って言われても、そんなぁ!!

(一同・笑)

松田:オレにできるのは、後ろでオロオロする事と、応援する事しかできないでしょ? だから、「君が頑張るしかないだろう?」と。

:オロオロしながら「ガンバレー」って言っていました。

うえだ:一応ちゃんと応援はしていたんだ。

:一応(笑)。

孫さんが怒ったのは最初の10話から? もう少し後の話ですか?

松田:毎回ですね。

:そんなに怒ってないですよ~!

松田:うん。怒っちゃいないよ。あきれていた(笑)。何だ、このプロデューサーって。他に言う事はないのかって感じで。

うえだ:(笑)

松田:あったら言っているって(笑)。できたらやっているっちゅうの……!

:……とても優しいキャラですよ? 私……。

うえだ:それはウソだ(笑)。

1話あたりで演出の人に与えられた時間は、どれくらいあったんですか?

松田:比較する物がないからね……。まぁ、組みたくないスケジュールではありました。限りなく厳しいスケジュールの中で、最大限に皆さんがやってくれたんですよ。みんな神!  みたいな……。

(一同・笑)

演出をやった上で、気を付けた部分とかはありますか?

:私は表情ですね。キャラクターの表情とかを、その気持ちになってと言うか。

うえだ:それは重要ですよ。

松田:ダビングの時に、「すみませーん! ここのパライエッタ、馬鹿なのでー」っていきなり言って、「馬鹿っぽくお願いします!」って(笑)。

:いや、あの――!

松田:オレも監督も大笑い(笑)。

:馬鹿とは言っていませんよー!

うえだ:何て言ったんだっけ?

:馬鹿亭主、です。ネヴィリルに対して馬鹿亭主状態だからって。

松田:そうそう、馬鹿亭主。それを立ち上がって言って、大笑い。でも、そこをこだわってくれた事がオレはすごく嬉しかった。

:いや、その場所は立ち上がらないと前に聞こえないから……。

松田:立ち上がんなくても大丈夫だよ!

:なにか伝わらなさそうな気がしません……?

うえだ:大事なところだよね。

最初に作品の資料を渡された時の「シムーン」の印象はどうでしたか?

:少女マンガですね。

うえだ:やっぱ、そう思うんだ。

:クライマックス近くは「高校を卒業」みたいな感じだったし。

うえだ:なるほどねー……。

:何かこう、高校を卒業する間際に「どうするの?」みたいな。進路とか、もう別れるんだけど……とか、そんな感じがしました。

うえださんは?

うえだ:世界観が独特なので大変かな? ちゃんと理解して演出できるか心配でした。しかも、最初にやったのが14話ですが、当然、そこまで積み上げてきた作品のノリがあるわけです。もちろん、それを壊しちゃいけない。なおかつ、設定がすごくく複雑なので、「あれ~?」と。実は最初、演出打ち合わせの前に絵コンテもらって読んだんですが、何が起こっているのかわからなくて、少し困ってました。それで、打ち合わせの時に監督に訊いたら、割と実はシンプルなストーリーで「ああ、何とかなるかな」と。

第2回に続く>
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